当院の取り組み

【眼科】正常眼圧緑内障とは

2021/12/10

1 はじめに

人間は外界の情報の約80%を視覚から得ていますが、近年我が国ではその大切な視覚情報を緑内障で失う人が増加しています。最新の調査では緑内障は我が国の視覚障害の原因疾患の28.6%を占め、第一位となっています。かつては高齢者の病気と考えられていましたが、現在の日本人の緑内障有病率は40歳以上では20人に1人、約5%であり、70歳以上では10.5%、80歳以上では11.4%と加齢とともに上昇していきます。さらに急速に進みつつある高齢化により、患者数の更なる増加が危惧されています。
以前は眼圧の上昇が緑内障の最大の原因と考えられてきました。ところが実際には眼圧が正常であっても緑内障になる「正常眼圧緑内障」が注目されています。

2 正常眼圧緑内障とは

緑内障は視神経が傷つくことにより視野(見える範囲)の一部が徐々に欠けて見えなくなる病気です。眼の中には毛様体(もうようたい)といわれる部分でつくられる房水(ぼうすい)という水が循環しています。房水は線維柱帯(排水口)から入り、シュレム管という排水管の役目をする管から眼の外に流出します。房水の量と眼の外にでる抵抗との関係で眼にかかる圧力が決まります。この圧力を眼圧と呼び、眼圧が高いということは眼が硬く、低いと柔らかいということを意味します。眼圧の単位はmmHg(ミリメートル水銀柱)で表され、正常の眼圧は10~21mmHgとされています。眼圧が高くなると視神経が圧迫されて傷つきやすくなります。ただし、21mmHgよりも高い眼圧であれば必ず緑内障になるということではありません。その人にとって適正な眼圧よりも高い眼圧が長期間維持されると視野に障害をきたします。

 

緑内障にはいくつかの種類があります。一つは隅角という眼からの房水の排水路が狭くなっているタイプ(狭隅角)の緑内障であり、閉塞隅角緑内障といいます。これは遺伝的背景や加齢により隅角が閉塞することで眼圧が上昇して緑内障を発症するものです。それに対し、隅角が開いているものの、何らかの原因で房水の流れが滞って眼圧が上がり緑内障を発症するものを開放隅角緑内障といいます。その中で眼圧は正常範囲であるにもかかわらず、視神経が緑内障を発症するものを「正常眼圧緑内障」といいます。実はまだ正常眼圧緑内障の詳しい発症メカニズムは明らかではありませんが、正常とはいっても常に一定の圧力がかかっていること、視神経の状態には個人差があり、眼圧や周辺の血液循環の悪化などが影響して発症すると言われています。
現在、正常眼圧緑内障は緑内障全体の7割以上を占めるほどになっています。その一方で、進行がゆるやかなため、病期が進行するまで自覚症状に乏しく、約9割が無自覚とされています。なんとなく見にくい、見え方がおかしいと感じて受診されたときにはすでにかなり進行しているという事が多いのです。

3 緑内障の検査

  • ➀眼圧検査:眼球の圧力を測定する検査です。空気で測定したり、チップを眼に接触させて測定します。
  • ➁隅角検査:特殊なレンズを眼にあてて隅角の状態を観察し、緑内障の種類を調べます。
  • ➂眼底検査:眼球の奥にある視神経や網膜などの状態を観察します。
  • ➃視野検査:見える範囲の程度と各測定点でどの程度暗い光まで識別できるかを測定します。
  • ➄画像検査(OCT(光干渉断層計)):視神経乳頭の形状を調べたり網膜の神経層の厚みを測定します。緑内障の場合神経層の厚みが薄くなってくることが多く、これを早期に発見することで通常の視野検査では異常がみられないような緑内障の前段階での診断が可能になります。

       

【視野検査】                    【画像検査(OCT:光干渉断層計)】

4 緑内障の治療

緑内障治療で最も大切なことは、これ以上視神経が障害されないようにして視野障害の進行を抑えることです。そのためにも病気が進行しにくくなると予想される目標眼圧まで眼圧を下げることが治療の目標になります。通常は点眼を開始する前の眼圧から20~30%下がった眼圧を目標とします。

【薬物治療】
点眼薬を使用して眼圧を下げます。正常眼圧緑内障に対しても眼圧を下げる点眼薬を投与することで緑内障の進行を抑えることができることが分かってきています。眼圧を下げる為には 房水産生を抑える種類の点眼薬と房水の排出を促す種類の点眼薬など多くの種類があります。最初は点眼薬一種類から治療を開始することが多いです。点眼薬によっては心臓病や喘息に影響を与えるものがあるため、医師とよく話し合っておくことも必要です。また、副作用のある点眼薬もあるため、症状によって点眼薬を変更したり追加したりして治療を継続していきます。最近では二つの点眼薬を一つに合わせた配合剤が増えており、点眼回数もこれまでより少なくてすむようになっています。点眼薬で十分な治療効果が出ない場合はレーザー治療や手術治療といった治療を行います。

【レーザー治療】
隅角にレーザー光線をあてて房水の流出を改善することで眼圧を下げる手術です。

【外科手術】
線維柱帯切除術に代表的されるような、線維柱帯の一部を小さく切り取ることで房水の流れを改善する手術がこれまでの主流でした。しかし最近ではより低侵襲な緑内障手術(MIGS)の割合が増えてきています。白内障手術の際に小さなステント(金属製の筒)を線維柱帯に埋め込み、シュレム管内の房水を多方面に流出させることで眼圧を下げる眼内ドレーン術などが代表的な手術です。

 

5 最後に

緑内障の治療には早期発見と治療の継続が必要です。特に近視が強い方、近親者に緑内障を患っている方は正常眼圧緑内障になりやすいとされており、40歳を過ぎたら眼科検査をお勧めします。
点眼治療を始めると、毎日定期的に点眼を継続する必要があります。つい忙しくて中断してしまう方も少なくありませんが、点眼薬を数日中断するだけでも眼圧が元にもどってしまう可能性もあります。
当院では人間ドックでの眼科検査がきっかけで受診される方が多く、早期発見に努めています。現時点で点眼が必要と判断されない場合でも、加齢とともに進行する場合も多いため、定期的な経過観察を行っています。目の機能を維持するためには、主治医とよく相談しながら、治療を毎日継続することが大切です。

アーカイブ