当院の取り組み

【リハビリテーション科】回復期リハビリテーション治療とは

2020/11/20

回復期リハビリテーション治療とは?

少子高齢化が進む中で、「病院完結型」から「地域完結型」の体制構築が必要とされており、良質かつ適切な医療を効率的に提供することを目的として医療機能(高度急性期/急性期/回復期/慢性期)の分化・連携が強化されています。リハビリテーション治療も各フェーズに特化した治療が提供されるようになりました。
回復期リハビリテーション治療とは、急性期の疾患・外傷の専門的治療を終えて病状が安定した時期に、機能の回復/能力低下の最小化/活動の改善を目的として行うリハビリテーション治療です。
救急治療を目的とする急性期病院の平均在院日数は2週間程度となっており、機能回復や能力向上を期待するリハビリテーション治療が必要な病状の場合は、早期から回復期リハビリテーション病棟を選定する必要があります。急性期病院から回復期リハビリテーション病棟への転院を相談する際には、医療連携室経由で診療情報提供書を送る必要があります。

回復期リハビリテーション病棟での治療について

回復期リハビリテーション病棟とは、日常生活動作能力の向上によって寝たきりの防止と家庭復帰を目的としたリハビリテーション治療を院内で集中的に行うための病棟です。患者の状態を把握し治療方法の提案を行う医師や、治療・療養上のケアを行う看護師に加え、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、医療ソーシャルワーカー、管理栄養士、薬剤師、看護補助者などがチームを組んでいます(図)。それぞれの高い専門性を前提に、目的・到達目標・手段に関する情報を共有し、業務を分担しつつも互いに連携・補完し合い、患者さんの状況に対応した医療を提供しています。

回復期リハビリテーション病棟の対象となる病気や病態について

回復期リハビリテーション病棟に急性期治療を終えたすべての患者さんが転院できるわけではありません。「入院の対象となる疾患」が限られています。また疾患によって「入院期間の上限」も違います。

回復期リハビリテーション病棟への入院対象となる疾患 算定入院期間上限
脳血管疾患、脊髄損傷、頭部外傷、くも膜下出血へのシャント術後、脳腫瘍、脳炎、急性脳症、脊髄炎、多発性神経炎、多発性硬化症、腕神経叢損傷などの発症もしくは手術後または義肢装着訓練を要する状態 150日
高次脳機能障害を伴った重症脳血管障害、重度の頸髄損傷および頭部外傷を含む多部位外傷 180日
大腿骨、骨盤、脊椎、股関節もしくは膝関節の骨折または2肢以上の多発骨折の発症後または手術(置換術など)後 90日
外科手術または肺炎などの治療時の安静により廃用症候群を有しており、手術後または発症後 90日
大腿骨、骨盤、脊椎、股関節または膝関節の神経、筋または靱帯損傷後 60日

※当院では特に脳血管障害の患者さんを受け入れて、専門的なリハビリテーション治療を提供しています。年間入院患者数のおよそ94%が脳血管障害の対象疾患の方です。

回復期リハビリテーション病棟の体制や取り組みについて

回復期リハビリテーション病棟に入院すると、まずリハビリテーション科の医師が診察を行い、病態に応じた目標や訓練内容などを設定し、リスク管理を明示してリハビリテーション処方を指示します。

理学療法士、作業療法士、言語聴覚士は個別訓練を患者さんに無理のない範囲で1日最大9単位3時間(1単位20分)行います。当院では当科の入院患者さんに対して平均8.5単位の個別訓練を365日提供しています。
個別訓練以外にも、病態に応じて立ち上がり自主訓練を導入したり、病棟看護師との病棟訓練を行ったりしています。

平行棒歩行訓練

平行棒歩行訓練

当院では病棟のデイルームに平行棒を設置しており、訓練室まで行かなくても歩行訓練が出来る環境を整えています。

上肢自主訓練

上肢自主訓練
上肢自主訓練
上肢自主訓練

デイルームのテーブルを自主トレーニング用にしており、病状に応じてプログラムを各自に設定しています。

言語くん

言語くん

失語症の患者さんに対しては、重症度を考慮しながら「言語くん」を用いた自主訓練を導入しています。

病棟看護師との歩行訓練

病棟看護師との歩行訓練

歩行訓練が進むと、病棟内での安静度拡大に向けて病棟看護師との歩行訓練が始まります。歩行量を確保して病棟内歩行自立を促進します。

また訓練時間以外でもベッドから離れて起きて生活する習慣をつけることが重要です。離床は回復期リハビリテーション看護の基本と考えて、理学療法士等セラピストと連携しながら離床時間の設定・延長を積極的に行っています。

回復期リハビリテーション治療の目的は、日常生活動作能力を向上させることが挙げられます。日常生活動作Activities of Daily Living;ADLとは毎日の生活を送る上で基本的かつ具体的な身体動作のことで、食事や整容、更衣、排せつ、移乗、移動などが含まれています。またADLは「訓練室で出来るADL」と「病棟でしているADL」に分けられ、出来るADLを、しているADLへ汎化させることが重要です。そのためには多職種間での情報共有が必要となり、カンファレンスを開催したり、日常的にコミュニケーションを密にしたりすることを心がけなければなりません。

<回復期リハビリテーション治療における各職種(リハビリテーションスタッフ)の主な役割>
  • 理学療法士(PT)

    病気やけがによる体の障がいや運動能力の低下を改善。「立ち上がる」「歩く」「寝返りを打つ」といった基本動作を促し、維持させる。

  • 作業療法士(OT)

    身体的障がいや精神的障がいのある人に対し、着替えや入浴、仕事・作業、遊びなどを通じて生活に必要な日常動作が出来るよう訓練する。

  • 言語聴覚士(ST)

    「聞く」「話す」「飲み込む」など、言葉や聴力、嚥下に関わる障がいを訓練によって改善する。

回復期リハビリテーション治療において、当院では多職種での合同カンファレンスを毎週全症例で行い、ADL改善に向けて最適なプログラムの検討や問題点の抽出、今後の方針についての話し合いなどを行っています。

また退院先を検討するにあたって、必要に応じて退院および在宅復帰後の生活を見据えた家屋訪問調査を行います。家屋訪問調査とは病院スタッフと患者さん本人が一緒に自宅を訪問して、自宅内での動作確認や注意点、介助方法の指導、住宅改修や福祉用具のアドバイスを行います。
さらに自宅退院後の生活を想定して、屋外歩行訓練だけでなく実際にバスや電車に乗車する公共交通機関利用訓練や掃除・洗濯・調理などの家事動作訓練、復職に向けてパソコン操作訓練などを個別の状況に合わせてアプローチしています。

当科での特徴的な回復期リハビリテーション治療

  • 反復経頭蓋磁気刺激(repetitive Transcranial Magnetic Stimulation; rTMS)

    成人の両側大脳半球は互いに抑制し合う大脳半球間抑制によって均衡状態にあります。片側の大脳半球に脳卒中が生じると神経活動性が低下して健側への大脳半球間抑制も減弱します。反対に健側の興奮性は高まり、障害側への大脳半球間抑制が増強されてしまいます。機能回復の過程によっては、この大脳半球間抑制の不均衡を是正する必要があります。その治療方法として注目を集めているのが、反復経頭蓋磁気刺激(repetitive Transcranial Magnetic Stimulation; rTMS)です(図)。

    反復経頭蓋磁気刺激(repetitive transcranial magnetic stimulation, rTMS)

    rTMSはその頻度により、局所神経活動を抑制する低頻度rTMSと局所神経活動を亢進させる高頻度rTMSに分けられます。適応を満たした病態の患者さんに、rTMSを用いて大脳半球間抑制の不均衡へアプローチした後に、引き続いてセラピストの個別訓練を行うことでリハビリテーション効果を高める狙いがあります。
    適応の症状や重症度がある患者さんには、適宜rTMSを併用しています。ただし、頭蓋内金属やてんかんの既往歴がある場合は対象外としています。

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